連想ゲーム / 小説「夢のありか」

 先日、劇団「八焔座」座長の菊地さんと、ちょっと文化人っぽい遊びをしたので、ブログを書こうと思い立ちました。ついでに、その遊びからショート・ショート(掌編)が出来上がったので、稚作ながらそちらも掲載しておきます。


○連想ゲーム

連想ゲーム」という遊びを昔からよくやっています。

 ノートの真ん中に一つ、なんでもいいので単語を書いて○をします。「PC」とか。そこから連想できる単語を多肢に派生させるのです。

「キーボード」、「仕事」、「電池」、「文章」とか。次にいま派生させた単語から、その先へ連鎖させます。必ずしも関係のある事柄にする必要はありません。直感に従って、考えずに並べていきます。

「キーボード」から「アルファベット」、「音」。

「仕事」から「お金」、「期限」、「夢」。

「文章」から「演劇」、「日記」、「目的」など。

 

 これを繰り返してノート1ページを埋めます。

 左の画像は菊地さんの連想ゲーム。まぁ初心者なので5分制限ならこんなもんでしょう。僕はこの2倍書けます(ドヤぁ)。

 ここからが、今回やった、僕と菊地さんのオリジナルな遊び。

○お題作り

 僕と菊地さん、それぞれ作った「連想ゲーム」の結果を交代して、一見何の関係もないキーワードを二つチョイスします。

 たとえば「ペットボトル」と「靴下」、「温度計」と「ダーツ」。

(「人」と「心」や「目」と「色」などは関連付けが出来てしまい、連想が平面化するからNGです)

 チョイスしたら、そのキーワードを使った「物語」を構築するのです。これが連想ゲームから立ち上げる面白さで、普通にライターが作品を書こうとすると、好みや経験に縛られて画一的なジャンルや展開しかイメージできないものです。このゲームを基盤とすることで、普段では絶対に選ばないキーワードが、意外な広がりを見せることがあります。

 

 以下はその例えです(いま流れ作業の中でざっくりと思い描きます)。

①音信不通の友人の家に入ると、バスルームに凍った靴下と凍ったペットボトル、それから机の上には液体窒素の取り扱いを調べた痕跡があり、窓が開いていた。ついさっきまで友人か、他の誰かがいたのかもしれない。それぞれの意味は何か、友人の行方は? → 物語の構築。(適当です。液体窒素とか言葉しか知りません)

 

②一面コンクリート、10畳ほどの薄暗い部屋に監禁された複数名の人間。窓はない。あるのはダーツと温度計、常温の飲料水のみ。置き手紙には「24時間生き抜け」と書かれており、最長でも15分に一投、必ず持ち回りでダーツに興じなければならない。室温とダーツは連動しており、当たったポイントに応じて部屋の温度が上下する。赤は上昇、青は下降。犯人の目的や拉致された人間の共通点は? → 物語の構築。(最近のあるあるですね。監禁物、極限状態を描いた非日常物を書きたいと思ってもネタに困りますが、その前提を持って連想ゲームから作ると意外と出てきます)。

 一人でやっても、結局立ち上げるストーリーが個人のセンスに依ってしまいます。ここで、僕と菊地さんは互いの構築したストーリーそのものを相手に投げました。

 相手の「連想ゲーム」の結果を元にストーリーを立てて、交換し、作品を一本作る、ということです。逆を言えば、自分の「連想ゲーム」を元に相手が考えてくれたストーリーを手がける、ということです。自分のセンスで広がった言葉(単語)が、相手のセンスで選択・結合されて、大まかなプロットとして帰ってくる、ということですね。

 ちょっと、文化人っぽいでしょ。

 八焔座やるじゃんって思いませんか。へっへっへ。

 

 菊地さんが僕の「連想ゲーム」から選んだキーワードは「友」と「絵画」。そこに条件が加わって、妹の存在とトラウマ、それから、タイムカプセルを登場させること、とありました。この記事の最後に、その夜に完成させた掌編「夢のありか」を載せます。

○掌編「夢のありか」

 出来上がったものを見て、

・友人の在り方

・タイムカプセルの処理

 以上二つが自分の思っていたものと真逆で面白い、と菊地さんはおっしゃいました。

 自分のセンスを中途半端な形で相手に投げてみることで、思いも寄らない料理のされ方で帰ってくる。

 

 この面白さはなかなか深みがあって、いいものです。

 菊地さんは、友人は自分の夢を曇らせる存在として、タイムカプセルは、自分の夢を後押しするものとして最初は想起していた、とのことです。結果的に僕も、後者に関しては似た立ち位置にもっていきましたが、主人公の捉え方はたしかに真逆のところからスタートしています。詳しくはぜひ、ご覧になってください。

 

掌編「夢のありか」

執筆 朝戸佑飛 / 原案 菊地史恩

 

 この「連想ゲーム」、いい頭の運動になります。ライターさんは、執筆が止まってしまった時などに軸となるテーマを据えてから広げてみると、次の展開のヒントになる言葉が出てきたりしますよ。

 物語でなくとも、企画発案にも使えるかもしれません。

 ぜひぜひ、遊んでみてくださいね。

 

 ちなみに肝心の菊地さんは、せっかく僕らしくもないメルヘンなプロットを投げたのに、完成しておりません。

 3月の本公演「灰色オセロ」に集中しているようですが、その前に読みたいと思ってくれる人は、ぜひ彼に直接のご声援を。笑

 ありがとうございました。

 

 

 朝戸佑飛